あまごい


 「あー、海南高校の人たちだね」

 園ちゃんは何気なしにそう言う。だけどあんまり他校に興味がなかった私にはそれがどこなのか、さっぱりだった。

 「え? 知らないの? 県内有数の進学校じゃない」
 「へえー」

 あんまりジロジロ見ていると何か言われちゃうかな。とは思いつつも、ドアのすぐそこに立っている海南高校の人たちを見る。男女とも紺のブレザーというわりとスタンダードな制服を身に纏った人たちは、楽しそうに談笑していた。

 「海南は将来有望な人が多いんだよなぁ。だから狙ってる女子も少なくないの」

 ね、狙う……って!

 そう言う園ちゃんも目がかなり怖かった。獲物を眺めているような、そんな目。

 「へ、へぇ?」

 何を言ったら良いのかもわからずに曖昧な言葉を漏らす。そうこうしているうちに、電車は次の駅へと入っていった。