「で、聞かせてもらおうじゃない」
私はぽかんと園ちゃんを見る。何のことだか、さっぱりわからなくて。だから園ちゃんがどうして楽しそうな顔をしているのか、まったくわからない。
「何のこと?」
「ほら! 傘の彼よ!」
傘の、彼。
言われてからはっとして、彼を思い出す。思い出される情景はやはりどしゃ降りの雨の中の、彼の後ろ姿で、思わず鞄を握った。
「あのぅ。申し訳ないけど、話すようなこともないといいますか……」
「いいますか?」
「折り畳み借りて、返してなくて。さらに傘に入れてもらって、その傘まで借りてしまったってだけです、はい」
台詞を、流し込む。
ことの顛末はそんなところだし、園ちゃんが気になるような面白いことはないはずなんだけど。

