「大丈夫。走れば間に合うはずだから」
 「はっ、走るの?」

 私は目を真ん丸にしながら園ちゃんを見る。園ちゃんは私のそんな様子なんて微塵も気にしていないようで、やはり私の腕を掴んだ。

 「間に合わなかったらどうするの? さ、走ろう」

 走るの苦手だし、それに。

 園ちゃんは私の手を引きながら走り出す。私はそれに必死で置いていかれないようにしていた。

 それに、こんな勢いで走っている人が滅多にいないからか、変に注目されてる気がするよぉ。

 半分涙目になりなから、前方のふんわりとした栗色の髪の毛を見つめる。園ちゃんの表情は見えない。

 運動が苦手な私を考慮して、加減しながら走っているのか不思議と息は切れない。だけど風が私の髪の毛を容赦なく乱す。それがとてつもなく、鬱陶しい。

 そんな現実から逃れるために、空を見上げた。薄暗い空は彼を思い出させる。私は不安と、ほんの少しの胸の高鳴りを兼ね備えていた。