「うん。一緒に帰ろ」

 園ちゃんも、隣で靴箱を開けて、ローファーを取り出した。

 「園ちゃん。実は、乗らなきゃいけない電車がありまして……」

 私は口ごもりながらそう告げた。

 園ちゃんと一緒に帰りたい気持ちと、彼に会わねばならないという使命感が混ざり合う。そしてそれを象徴するように、私の目線は覚束なく、昇降口の方と園ちゃんとを行き来していた。

 「え? まさか、例の彼」
 「……うん」

 私がそう答えると、園ちゃんの表情が途端に輝きだす。そして園ちゃんは急いで靴を履いたかと思うと、私の腕を掴んだ。

 「じゃあ走ろう! 絶対間に合わせなきゃ!」

 園ちゃんはその勢いのまま自分のドット柄の傘を手にして、私の腕を掴んだまま昇降口へ向かっていく。

 「そ、園ちゃん! 私、傘を……」
 「もう! 彩月早く!」

 園ちゃん、怖いよう。
 なんて思いながら、ハート柄の少し目立つ傘を手にする。そして園ちゃんの隣に並んだ。