「きょ、今日会えなかったらどうしよう……!?」

 浮かんだのは私の手元に傘を置いて、雨の中をずぶ濡れになりながら走り去っていた彼の後ろ姿。今日の雨がどの程度のものなのかなんて知らないけれど、不安が募る。

 「さあ? その時はその時だよ」

 相も変わらず、梓は彼に対して酷くドライだった。だからかその分私は彼のことが心配でならない。

 ……彼の傘を抱え込んで、彼を追いかけなかったのは間違いなく私なのだけれど。





 「彩月帰るの?」
 「えっ……ああ、園ちゃんも?」

 下駄箱でローファーを地面に下ろす。足を滑り込ませたその先は、もうすぐ雨が降るこの天気のせいか、少しだけ湿っぽい。