「梓、おはよう!」

 満面の笑みを浮かべながら梓に挨拶をする。下駄箱のところで梓は、私のこの笑みの理由がわからないようで、ぼけっとしていた。

 だが、私の全身を舐め回すように見てから、気がついたように表情を緩ませる。私もそれを見て、ふんわりと笑いかけた。

 「なるほど。今日は傘持ってきたのね」
 「うん!」

 私は自慢げにハートの散りばめられた傘を見せた。

 「今日は午後から雨らしいもんね」

 「そうなの。でね。もしかしたら例の彼にも会えるかもしれないから、折り畳みも持ってきたの」