早く、返さないと。

 そう思いながら、改札を抜けた。私の周りには高校生らしき人もたくさんいたけれど、例の彼の姿は見当たらない。

 やっぱり会えないか。

 とは思いながらも諦めきれずに、あたりをきょろきょろと見渡す。それでもやはり彼はいなくて。なんとなくこの行為が虚しくなった。

 電車の時間はいつもと同じだった。彼と会った2回も、まったく同じ時間に乗っていた。だから同じ時間の電車に乗っているのかと思ったけれど、あれ以来一度として同じ電車になったことがない。

 ふうっと息を吐く。

 今日もまた、いなかった。そんな思いを抱えながら駅を出た。

 太陽がじりじりと私を照らして、肌を焼こうとする。そんな太陽を恨めしげに見上げた。

 空は雲ひとつない快晴。心が洗われるような清々しいものではあるけれど、なんとなく物寂しい。

 私の鞄の中はいまだに、重たかった。