「で、結局傘はどうしたの?」
 「折り畳みの方は鞄に入ってるけど、長傘は家で干してる」

 言ってから、長傘を私の手元に残していってしまった彼の後ろ姿を思い出す。

 「風邪、ひいてないかな……」

 私の家に程近いあの場所から彼の家が、どの程度かはわからない。だけど少なくとも私と彼は小学校の学区が違う。だとすれば、結構遠いんじゃ……?

 そこまで考えて、罪悪感が募り始めて、頭を抱えたくなる。

 「わかんないけど大丈夫じゃない? 男だし」
 「確かに性別は男だけど、結構細かったし、風邪、ひきやすそう」

 とは言っても、正直あの空間は恥ずかしすぎて、彼のことをまじまじと見ている余裕はなかった。強いて思い出すのは、背が高かったことくらい。