あまごい


 あ、そうか。私、園ちゃんのこと祝いたいとかなんとか思っておいてやっぱり、伊勢谷くんが好きなんだ。だからこんなに、苦しいんだ。

 いっそ泣きたかった。泣いて、この想いごと全部流してしまいたかった。だけど園ちゃんが鼻をすすった音で一気に現実に返される。

 「彼女いたらもう、諦めるしかないよね」

 園ちゃんは顔を俯かせたけれど、私はさっきのように園ちゃんを抱きしめることができなかった。やっぱり私は最低なやつだ。園ちゃんが振られたことより、伊勢谷くんに彼女がいた事の方が辛い。辛くてたまらない。

 夕暮れ。グラウンドからは運動部の声が聞こえる。私はただただそれを耳に入れながら、うつむく園ちゃんの前で、立ち尽くしていた。