あまごい


 しばらくして園ちゃんは私からゆっくりと離れていく。私はそれを不安に思いながらも手を離した。そして園ちゃんはズズッと鼻をすすってから声を出した。

 「タカね、彼女、いるんだって」
 「え?」

 その衝撃に思わず声が溢れる。

 「海南の子。同じクラスの子だって」

 えっと……何の、話? 園ちゃんは今、何の話をしているの?
頭がついていかない。まったく、働かない。

 「写真見せてもらったけど、可愛い子だった。私、勝てないって思っちゃった」

 伊勢谷くんの……彼女……?

 そこでやっとその言葉の意味を理解して、心臓を掴まれたような感覚に陥る。