私の中ではかなり長い時間のようだったけれど、園ちゃんが次の言葉を発するまでのほんの少しの間だったらしく、私の時間が元に戻った瞬間にまた、園ちゃんの声が聞こえてきた。

 「話、聞いてくれない?」

 そうだ。いつだって園ちゃんはわかってるんだ、きっと。

 「うん、」

 私が頼まれて、断る勇気なんて、ないことも。全部。

 「わかった。じゃあ、放課後ね」
 「ありがとう」

 園ちゃんの声が木霊する。

 私は感謝されるような人間じゃない。どろどろで嫌な奴で。そんな自分が嫌だった。

 キーンコーンカーンコーンというチャイムの音がどこか遠くの方で聞こえた。私はぼうっとしながらも教科書を机に入れようと鞄に手をかける。この鞄に伊勢谷くんの傘が入っていたあの頃が懐かしい。そう思いながら空を見上げる。相変わらず空は、雲ひとつない快晴だった。