「うん、おはよ」

 私はどこに目線を定めたら良いのかも分からずに泳がせる。だけど園ちゃんはそのことに気がついていないのか、それとも気がついていてあえてのスルーなのか、言葉を紡ぎ始めた。

 「彩月さ、今日の放課後空いてる?」
 「え……」

 だめだ。まだ顔は見れない。

 だから私は園ちゃんの首元まで視線を上げた。

 「あのね、ちょっと話したいことがあるから……うん。みんながいなくなったあとの教室でもいいから」

 私は意外と冷静なのかもしれない。園ちゃんの懇願はあの時のようだった。

 「お願い、彩月」

 ――お願い彩月。

 その言葉がまた、蘇る。頭の中で幾度か反芻する。