「彩月、なんかあった? 今日、くまヤバイけど」

 梓はいつだって私の異変に気がついてしまう。そしてそれに頼りきって甘えて、ひとりで立つことができない私は、そんな自分が嫌だ。そう、思ったからかな。本当は、園ちゃんと伊勢谷くんのことを話した時点で梓はきっと全部お見通しだったんだ。いま私に「何」があったかも、全部。だけど私は、

 「ううん、ちょっと夜更かししちゃっただけ」

 なんてバレバレの嘘を吐いて、梓を遠ざけた。それが何の意味もなさないことを、わかっていながら。

 梓に私が今抱えているものを全部吐き出せば、楽になるのかな? そう、思ったけど、私は何一つ梓に言えなかった。