それから数日後、家にある女性がやってきた。


私は怪しげに、「……誰ですか?」と尋ねた。


「家政婦です。」


と、にっこり笑って女性は言う。


 家政婦……?


はじめは変質者かと思って、いろいろ質問をした。


「……名前は何ですか。」


ムッとしながら聞く私。
それなのにニコニコとしながら、名前を言った。


「安内奈津(やすうち なつ)です。」


「何歳ですか。」


「35歳です。」


「どこから来たんですか。」


「〇〇紹介状っていうとこから来たの。」


「誰に頼まれてここまで来たの?」


「あなたのお父さんよ。」


すべての質問に笑みをつくって答える女性。
でもそんな女性に、一言言った。


「……帰ってください。」



私はお父さんと言う言葉を聞いただけで、苛立ちが押さえられなかった。


「待って!!」


家政婦とやらは、閉めようとしたドアをこじ開けるようにそう言って止めてきた。


 なんなの。


私は仕方なく、再びドアを開けた。
それを見た家政婦は、鞄からケータイを取り出し、誰かに電話をかけた。


「あ、もしもし、安内です~。」


電話越しにでもニコニコとしている家政婦。


「あの、もしかして娘さんに、私が来ることを知らしていなかったんでしょうか?


 娘さん、何も知らないみたいなんですが……。」


家政婦が電話している宛先がわかった。
……お父さんだ。


「え?はい、はい。あ、わかりました。失礼します~。」


家政婦の電話が終わったようだ。
そして私に話す体勢に入った。


「お父様に伝えておいてって言われました。


 「お前に苦労させないように、家政婦を呼んだ。
  安心しなさい。」と。」


 何が「安心しなさい」よ。


私は、「勝手にすれば。」とだけ言って、玄関のドアを開けたまま、自分だけ中に入っていった。


家政婦は「お邪魔します。」と言って入ってきた。


そこから、またもや狂い始めたんだ。