心の迷路





とりあえず考えられたのは、あんるさんにメールをしようということだった。


そして私は、あんるさんにメールをした。


『助けて。』


私にはもうあんるさんしかいない。
頼れる存在は、いつものあんるさんしかいない。


するとすぐに返信は返ってきた。


『どうしたの?』


ほっ。


『あの家政婦、とんでもないの。お父さんも家政婦の件、全然信じてくれないし、もうどうしていいのかわかんない。』


そう私が送信した。


でも、驚きの言葉が返ってきたんだ。


『もーやめてよ。めんどくさい、あんたのそういうところ。』


 ……え?


『ど、どういうこと?何言ってるの?』


『あんたが何言ってんの。頭おかしいんじゃないの。』


 ……あんるさん?


もう、いやな予感しかしなかった。


『あんるさん、どうしたの?』


『どうした?何言ってるの、私は私のまんまよ。今まで、あんたにつきあうのしんどかったわ。


 あのね、普通、家政婦がいやで家から逃げて夜遅くまで遊んでるなんて、ありえないの。


 頭おかしいんだよ。どうかしてる。


 そんなやつとはお友達にはなれないの。それに……これはただのサイトで知り合ったニセ友達よ。


 縁を切るのは簡単なんだよ。


 まさか、本当の友達だと思ってた?やめてよね、そういうの。
 勝手に信用されても困るんだよ。』


 ……うそ。

 あんるさん?


足が震えだした。


『あんるさん?冗談だよね?ね?』


『うっとおしいなぁ。


 これ、いつ言おうか悩んでたところだったんだ。ちょうどよかった、ちゃーんとこの日が来て。


 両親に見放されてるやつ、一番嫌いなの。私まで巻き込まないで。あんたの世界に。』


 ……いや。


まだ下には、メールの続きがあった。


『あ、そうだ。もう私、あんたのメールだけ着信拒否するから。』


そう書いてあった。


『ちょっと待ってよ。今までのは全部演技だったって言うの!?』


そう返信してみたけど、もう着信拒否されていた。


 ……あーあ。


 裏切られちゃったなぁ、私。


 もうどうしようもないのか……。


私立ったまま動けなかった。


何も考えられなくて、目の前は真っ暗だった。


なにが起きたのか、はっきりわからなかった。


今まで信用していて頼りにしていた人に、こんな簡単に裏切られちゃったんだ。


カシャン。


つい、力が緩んで携帯を床に落としてしまった。


ああ、あれだけ私は人を信用しないと決めてきたのに。


信用するから、こんなことが起きるんだ。


はじめから、一人も信用なんてしてなかったら、こんなことにはならなかったんだ。


ショック、悔しい、悲しい、泣きたい、腹が立つ。


そんな感情は、私の中には別になかった。


ただこれだけは思った。


これからは、何があっても、私は誰も信じない。


信じたら自分が傷つくだけ。


だから、もう誰一人と、信じない。