数日後。


朝はいつもどおり、私は携帯であんるさんにメールをしながら登校する。


そして、私より早く来ている若宮くんとは学校に行くと一緒に話すのが新しく日課になった。


若宮くんは私と関わったせいで、友達はいない。
女の子たちにも囲まれなくなり、はじめの人気はガタ落ち。


なのに、若宮くんはなんにも気にしていないのか、私と関わることをやめない。


そしてこの日、私は聞いてみた。


「どうして、私と関わっても平気な顔していられるの。みんなから完璧に嫌われちゃってるよ。」


すると若宮くんは、「うーん」と頭をかきながら考えて、こう言った。


「だってさ、そんなことで嫌うなんて、俺はそれぐらいの程度でしか見られてなかったわけだろ?


 そんなんだったら、はじめから友達なんていらねーし、こっちから願い下げだよ。」


……似たような考えだな。
私とはちょっと違うけど。


「ふぅん。でも、そうして私なわけ。私なんかよりもっと楽しい人いるじゃん。」


「いないよ。」


「変な冗談。」


「自分で気づいてないの?俺は、楽しい人といるより、心の綺麗な人といるほうがよっぽど楽しい。」


「は?何言ってんの。」


「このクラスは、みんな心が真っ黒だ。なのに、夏野さんだけが、すごく心が綺麗なんだよ。」



意味わかんない。
何言ってんのこの人。


「そんなのどうしてわかるのよ。人なんて簡単に信じないほうがいいよ。心が綺麗だなんて、人の心がわかるわけないじゃん。」


「話してたらわかるよ。俺、そーゆうの敏感なんだ。」


「私はそんなの信じない。私は……私の心の中は、真っ黒よ。」


「自分でなんてわかんないだろ。」


「わかる。自分のことは、自分が一番よく知ってるから。」


そう。
自分がよく、自分の中を知っている。


私の心は汚れてるの。
綺麗なんかじゃない。


それこそ若宮くんが言う、心が真っ黒なんだ。


うちの家族はみんな汚い。


だから私も、そうなんだ。