「夏野さん?どっか痛いトコあるの?大丈夫?怪我させられてない!?」
若宮くんは肩をつかんでそう心配してきてくれた。
「……別に。何もない。」
私はそう言った。
不思議。
若宮くんには肩をつかまれても、振りほどきたい気持ちにはならない。
やっぱりこれは……私も友達意識をしてしまっているんだろうか。
心の奥のどこかで、何かがうずいた。
「本当に?大丈夫か?」
「大丈夫。」
「つか、お前すごいな、夏野さん。」
「なにが。」
「あんな怖い奴らにはむかっていくなんて……尊敬するわ。」
「それはこっちのセリフだよ。あんな奴らに殴るかかるなん……て。」
私がそう言いかけたとき、若宮くんを見て驚いた。
震えてる。
「……なによ、怖かったんじゃない。」
私がそう言った瞬間、若宮くんは「バレた」という表情をした。
若宮くんは、手も、足も、小刻みに震えている。
「……怖くなんかなかったっつの。俺は……男だぞ?」
「……バカ。嘘丸見えよ。転校生くん。」
「……。」
「でも、ありがとう。若宮くん。」
初めて、「若宮くん」って、名前で呼んだ。
それに「ありがとう」なんて自分から言ったの、いつぶりだろう。
「……夏野さん今……名前で呼んで……。」
若宮くんは驚いていた。
「……なに。」
私は、知らんぷりをした。
なぜだろう。
この人とは、どこかで何かの……深まりを感じた。



