私は内村に言う。


「ふぅん。この消しゴム、いらないんだ?」


「はぁ?」


私は、迷いもなく内村が投げたと思われる消しゴムをゴミ箱に捨てた。


バコッという勢いのある音が鳴った。


そして教室から出て行こうとした時だった。


キーンコーンカーンコーン。
キーンコーンカーンコーン。


チャイムが鳴った。


 もう、教室から出て行こうと思ったのに。
 無理だったじゃん。


私は教室から出て行くのをやめ、何事もなかったかのようにして自分の席についた。


「アンタ、覚えておきなさいよっ……!」


悔しそうにこちらに向かってそう言う内村。


 自業自得。


そう思いながら、私は鞄の中にある教科書などを机の中にしまった。


すると、担任の先生が教室に来て、ホームルームを始めた。


「おーい座れー。今日は転校生を紹介する。」


担任は男の人。
低い声が、教室に響き渡る。


クラスは、「転校生」というのでざわつきはじめた。


 ……転校生?
 もしかして。


私は察知した。


「入りなさい。」


担任のその一言で、教室のドアが開いた。


スタスタと軽い足取りで教卓の隣まで歩いてくる、男の人。


背が高くて、スラッとしてて、見覚えが……というか、面識があった。


そして彼は、自己紹介をした。


「今日からこのクラスでお世話になる、若宮千歳です。」