教室に入ると、まだ誰もいなかった。
時間はまだ7時15分くらい。
だいたいみんな7時20分くらいに来るんだよね。


毎朝7時に来てる私はよく知っている。
今日は遅くなっちゃったケド。


自分の席について、持参してきた本を鞄から出して読み始める。
ケータイ小説で、すごく面白い話。


しばらく……というか、5分くらいしたら少しずつ人が登校しはじめてきた。
みんな友達同士で来る人が多く、教室に入ってくるときは何人かで来る人が多い。


早速教室に入ってくる人たち。
はじめに入ってきたのは、2人組みの女子だった。


「うわ、また朝早くから来てるよ。夏野未来。」


「ホントだぁ~。なんで毎日朝早くから来てんの~?なんかこわーい。」


「わかる~。なんか、家から追い出されてて、野宿してるとかいう噂だよ。」


「あ、それなんか聞いたことある。でも、家には両親いないとか聞いたこともあるケド?」


「えー、マジでー!?意味わかんなーい!」


朝から女子たちの会話は、私の話へと変わる。
世に言う悪口&噂。


 そんな私の話して盛り上がれるなんて、そっちのほうが意味わかんないわ。


どんどん登校してくる人たち。
教室に入ってくると同時に、みんなの空気が重くなる。
私への敵視。
目つきの変え方がすごい。


こんなことになったのはよくわかんないけど、私が笑わなくて下ばっか向いているから、「暗い」という噂から、いろんな話になっていった。


なぜか両親いないことまでバレてるし。


別にどうでもいいけど。


読んでいた本を閉じ、席を立ち上がった。


 トイレ行こう。


空気の重い教室にはいたくない。
だからよく、トイレに行ったりする。


そして教室のドアを開けた、その時だった。


コンッ。


なにかが背中にあたった。


何か、固いもの。
痛いことはない、ただあたったということがわかるくらいの感覚だった。
後ろを振り返ると、女子の何人かがこちらを見てクスクスと笑っている。


女子たちのしわざだと、すぐにわかった。


いつものことだし。
リーダー的存在の、内村楓(うちむら かえで)が、一番私につっかかってくる。


 何か投げたな。


私はそう察知した。


下を見下ろすと、消しゴムが落ちていた。


 ……やっぱり。


私の予想は的中。
そしてもうひとつ的中することになる。


内村が投げたということ。
ま、そんなの普通にわかるか。


私は消しゴムを拾い上げ、こう内村のいる方に言った。


「これ、あんたたちのでしょ。」


「はぁ?なんのことー?」


内村はクスクスと笑う。
その周りの女子も。


私はムッとして、ある行動を思いついた。