私は今日も生物室に向かう。
特に用事はないんだけど、高原先生と話してると楽しいし落ち着くんだよね。

「あっ、あかり!待ってたよー!」

「待ってた…?私、生物室行く約束とかしてないですよ!」

「毎日来るから、今日も来るかなーと思ってさ!俺、意外とこの時間楽しみにしてるんだよ!」

ドキッ…

先生の言葉に胸が高鳴ってしまった。

「あかり、ちょっと相談があるんだけどさ、いいかな?」

「はい!私でよければどうぞ」

「来週誕生日なんだよ。…彼女の。」

えっ…彼女…?

「先生、彼女いたんだ。」

「まあね!」

先生は少し照れたように、目線をそらした。
そして、自分の首に手をまわした。
この2ヶ月先生と話して気づいたこと。先生は照れると自分の首に手をまわすんだ。初恋の話を聞かせてくれたときもそうだった。

「7月に付き合い始めたばっかで、誕生日プレゼントあげるのも初めてなんだよ。何がいいのかな~と思ってさ。」

私は胸の奥がぎゅーとなった。苦しい。

「ネックレスとかどうですか?」

「ネックレスかー。いいね!ちょっと探してみる!」

「先生の彼女ってどんな人なんですか?」

「可愛いよ。すっごく可愛い。」

先生の耳、赤くなってる。

また、胸がぎゅーっとなる。

「先生、彼女のこと大好きなんですね。どこで知り合ったんですか?」

「高校の同級生だよ。5月にクラス会で会って、仲良くなったんだ。高校の時はあまり話したこともなかったんだけどさ。」

「そうなんだ。いいですね!」

私はそれ以上何も言えなかった。
胸がぎゅーっとなって苦しかった。

「先生、私そろそろ帰ります!」

「そうか!相談乗ってくれてありがとな!気をつけて帰ってよ!」