車に乗ると先生の匂いに包まれた。
先生の匂い、落ち着く。
先生といつものようにくだらない話で笑い合う。
「そういえば、先生、彼女さんにプレゼントあげました?」
先生の顔から笑顔が消えた。
「実は…俺ふられたんだ。」
「え…?」
「あいつ、俺のことは本気じゃなかったって。婚約者がいるらしい。俺、バカだよな。」
私は何も言えなかった。その代わりに、私の目から涙が流れた。
「なんで、あかりが泣くんだよ」
先生は泣いている私を見て言った。
「そんなのひどいよ。先生は彼女のこと大好きたったのに。ひどいよ。」
私の涙は止まらなかった。
大好きな先生が悲しそうにしてるのを見るのがつらかったんだ。
先生は路肩に車を止めた。
「あかり、もう泣くな。あかりが泣くことじゃないだろ?」
そう言って先生は私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
「私…先生のこと好きなの。大好きなの。だから、先生が悲しんでるの見るの嫌なの。」
先生は困った顔をした。
「そんなこと言われても困りますよね。ごめんなさい。今言ったことは忘れてください。」
私はそう言って車を降りて走って帰った。
