…本当、よっぽど嫌われてるみたいだ。
その声にロビーへ向かうのをやめ、私はオフィスへ戻るように歩き出す。
(…泣くな、泣くな)
『調子乗ってるから』
『あんなオバさんが』
『仕事しか取り柄ないんだから』
別に調子になんて乗ってない。
好きでこの歳になったわけじゃないし、確かに仕事しか取り柄はないかもしれない。
けどやっぱり、悔しいよ。
『大人っすね』
田口くんはそう言ってたけど、全然大人なんかじゃない。
つらいことだらけで、逃げたくて泣きたくて、誰かに縋りたくて…だけど逃げる場所もない。泣きつく相手もいない。
だから耐えてる。我慢してる。
気持ちをぶつけたい。
全部吐き出して、すっきりしたい。
そんな気持ちを抑え込み、廊下を歩き続ける。



