「はぁ!?予定してた商品が全部生産中止!?どういうこと!?」

『すみません……』



電話の相手は、商品生産部の担当者。

『生産過程の都合で中止になった』と謝る男性社員相手に、私は容赦なく怒鳴りつける。



「すみませんじゃないわよ!この時期にいきなり何言ってるわけ!?それが入る前提で売り場構成考えてるスタッフの子の身にもなりなさいよ!!」

『は、はい……本当にすみませんでした。それでですね、似たようなものであれば一応出せることは出せるんですが、生地や色味が多少変わって……』

「わかりました、じゃあその資料PCに送ってください。大至急!!」



ガチャン!!と叩きつけるように電話を切ると、「フーッ」と吠えるように息を吐いた。



「相変わらずだなー……稲瀬。おー怖い」

「仕事の鬼だよな……」

「ちょっとそこ!話してる暇あるならこれコピーとってきて!」

「はっはい!」



悪かったわね、鬼で!

自然とつりあがる目に、スーツ姿の若い男性社員は怯えるようにコピー機へと走る。