ロンリーファイター






稲瀬さんのことは、正直あんまり好きじゃない。

いい人だとは思うけど、仕事のことになると口うるさいしすぐ怒るし、特に周りから叱られたこともなく過ごしてきた私には唯一の敵だった。





『峰岸さん、ここ間違えてる。やり直しして』

『え〜?丸々ですかぁ?少し間違えたくらい大丈夫ですよぉ』

『峰岸さんが大丈夫でも見る人には大丈夫じゃないから。今すぐに』

『……』





そんなんだから彼氏もいないし、そんなんだから結婚も出来ないんだ。

オシャレもせずに仕事ばっかりで、女として私以下の人にどうして怒られたりしなきゃいけないんだろう。



そう思って、嫌味を言ってばかりいた。