…どうせもう終わった話だ。 ならすっきりするまで、全部伝えよう 「……」 「……」 「…詩織」 「…!」 下って行くエレベーターの中、何年ぶりかに呼んだその名前は静かに響く。 「今更だけど、聞いてほしいことがある」 「…?」 ずっと言えないまま、その手を離してしまったけれど 「詩織と結婚して一緒にいた頃、俺は毎日幸せだったよ」 「……」 幸せ、だった。 朝起きると詩織がいて、夜眠る時にも詩織がいて 安心した、穏やかだった、愛しい毎日。