ー…
その日の夜、時刻は夜7時を過ぎた頃。
「じゃあ俺そろそろ帰るわ。お前もあんまり遅くまでやってるなよ」
「はーい、お疲れ様です」
「お先に」
少し残業をしていた俺は、今日も仕事の積み上がった椎菜を一人残してオフィスを出た。
(あいつも毎日頑張るねぇ…)
西島とかより給料稼ぐんだろうな…いや、下手すれば俺と同じくらいか?
想像してすげーな…と感心しながら、エレベーターへ乗り込んだ。
ひとりきりのエレベーターは1のボタンを押すと下り出す。が、すぐにポンと止まりドアは開いた。
「……」
「……」
その階…四階から乗ってきたのは、同じく残業をしていたらしい彼女で、度重なる偶然に向こうも驚いたのだろう。その目は小さく揺れる。
「…お、お疲れ」
「…お疲れ、様です」
呟いた言葉にすぐ背中を向けられてしまう。



