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「滝さんって、嘘つきっすよね」
「は?」
午後のオフィスで、周りではドタバタと皆が働く中(いや、正確にはドタバタしてるのは椎菜一人だけれど)コーヒーを配る田口は、小さく呟いた。
「嘘つきって…何だよ」
「俺に前に言ったこと、自分じゃ全くやってないじゃないすか」
「…?」
田口に、前に言ったこと?
「『好きなら好きだって伝えろ。言わなきゃ誰だって分からねーんだから』」
それは、椎菜に対してもどかしい田口へ充てた言葉。
「あの時の言葉、そのままお返ししますよ。骨なしチキン野郎」
「なっ…」
「とられてから後悔しても、遅いんじゃないすか」
田口はそれだけ言って、スタスタと歩きまたコーヒーを配る。



