ロンリーファイター




「実は先日、用事のついでに初めてエミューのオフィスへ伺わせて頂いたんです」

「え!?知らなかった…」

「皆さんの仕事の邪魔になるといけませんから。部長さんだけにしか言ってなかったんです」

「そうだったんですか…」

「その時に一人だけ、物凄い勢いで仕事をしている女性がいまして」

「…もしやそれが」

「そう、稲瀬さんですよ」





『ちょっと!この資料まとめておくように言ったでしょ!!』

『すみません!!』

『稲瀬ー、電話きてるぞ』

『こっちの書類サインくださーい』

『おい昨日の資料どこやった?』

『はいはいはい!順番!!』





「会社は男性が主体で女性がサポートするものだとばかり思っていました。けれどあの場はあなたを中心に回っている」





『部長さん、彼女は?』

『ん?あぁ、稲瀬ですか。奴は仕事は出来ますが、気は強いし可愛げはないし…』

『稲瀬、さん…』

『しかもおまけにもう三十路で!そのくせそういった話には縁のない女でして…まぉ社員としてはよくやってくれてはいますがね』

『……』





「正直あの時髪振り乱して仕事してた姿を見ていたので、今日のそんな綺麗な格好じゃ一瞬誰かわかりませんでした」

「うっ…」



悪気なく笑う高城さんに、私は気まずく苦笑いをする。