俺はガキで頼りないし、まだ学生のバイトだし金もない。背だって、向こうの方が高い。 何一つ、勝っているところなんてない。 そもそも誰かと張り合ったり、勝負をするのは好きじゃないし、勝ち目のない勝負をするのはもっと好きじゃない。 『俺には関係ないし』 だから最初から、逃げているんだ。 「……」 そうしてやって来たカフェの入り口から見えた店の奥には、まばらな客たちと小さなテーブル席に座る二人の姿。 (…いた)