「え?そうなの?」
「前からそんな噂あるじゃん。滝さんは女好きなフリして、実は稲瀬一筋で…けど稲瀬が断ってるって」
「そ…そうなんすか?」
「あくまでも噂だけどな。だからほら、滝さんって稲瀬のこと下の名前で呼んでるし、めちゃくちゃ気に入ってるじゃん」
「……」
言われてみれば、先輩たちの言葉はなかなかあてはまるもので…確かに滝さんは社員の中でも唯一彼女を椎菜と呼んでいる。仕事での立場上よく二人で動くこともあるし、飲みに行くことも多いらしい。
そう思うと…確かに仲良いかもしれない。
「けど滝さんだろ?顔良し収入良し面倒見も良し…あんなレベル高い男断るなんて、稲瀬の理想どんだけ高いんだよって感じだよな」
「だから今だに結婚出来てないんじゃん?」
「あぁそれだ!」
「……」
滝さんが、椎菜さんのことを…
ってあれ、何で俺が気にしてるんだ?
別に滝さんが椎菜さんを好きだろうが嫌いだろうが…関係無いし。…そうだ、関係無い。
だって俺と椎菜さんはただの上司とバイトで、それ以上もそれ以下もない。そんなこと気にする理由がない。
…そう、ないんだ。



