「…私のことはいいのよ。田口くんこそ、折角の大学生活そっちのけでバイトばっかりしてていいわけ?」
「別に…特にやりたいこともなくて大学行ったから、卒業出来ればそれでいいし」
「?そうなの?」
「成績もついていけるから、試験期間とか大事な授業の時だけ学校行ってるっす」
「へぇ…あ、じゃあ就職とかどこにするっていうのは…」
「就職はこのままバイトが続けば、うちの会社で雇ってくれるらしいっす」
「え!?そうなの!?」
「滝さんがそう言ってて、部長にも話通しておくって」
「知らなかった…」
初めて聞いたその話に思わず口からハンバーグがこぼれそうになってしまう。
だって田口くんのようなタイプの男の子と、アパレル会社…どう見てもあまり相性は良くなさそうだから。
「でもいいの?うちの正社員ってことは、アパレルの営業とか企画とか経営管理だよ?」
「んー…まぁ、最初はあんま乗り気しなかったっす。女向けのアパレルとか興味ないし」
「だろうね…」
率直な疑問を投げかける私に、彼は率直な答えを返す。
「けどまぁ、バイトしていくうちに営業とか経営管理とか面白そうだなーと」
「あー、まぁ合う人には合うだろうね。数字とか得意なら尚更」
「ま、このご時世に選り好みしていられないっていうのもあるんすけど」
そう呟く田口くんの隣で、私は残り少ないハンバーグをまた一口食べた。



