扉が閉まる音が聞こえ清水はイヤホンを外す。

「…意外と早かったな。」

ここまでは良い。
ただ、これ以上は困る。

「だから嫌いなんだよ。
勘の良い奴は。」

清水はポイッと盗聴器の受信機を投げるとベッドに横になった。
4月とは言え窓から入って来る夜風はまだまだ冷たい。

「…今までも大丈夫だったんだ。
今回も大丈夫。」

清水は誰ともなく呟く。

「大丈夫…。
大丈夫だから…。」

清水はそっと起きあがると自らを抱き締めるように膝を抱えた。

「いない人間の事なんて…分かるはずない。」

清水は確信ではなく祈るように言葉を紡ぐ。
まるで何かに怯える子供のように。

清水が甘く考え過ぎていた事に気がつくのは遠くなかったのに。