公園から少しはなれ

バス停の青いベンチに座った2人。



重い沈黙を破ったのは私だった。




「私のお父さんはね、

 人殺しなの」



明らかにナルが

動揺したのがわかった。



でも、私は続ける。



小学生になってから

あっとゆうまに広まったその真実。



私は毎日毎日

"人殺しの子ども"


なんていって、いじめられた。



「私のお母さんはね、


 お父さんが刑務所にいってから

 おかしくなっちゃって」


──自殺したの。



その言葉を私は

空気にそって

そこ置くように静かにいった。





自分の中にいちばん残っているあの光景。


お風呂場で手首から大量に血を流し

まったく動かないお母さんを前に


なにもできなかった幼い頃の私。




小学4年生のとき親戚に引き取られてから

何度か学校にいったけど


真実は真実で


いつしか学校にいけなくなっていった。



それからずっと

1人だった、と。




私は

いいながら

自分で自分が情けなくなる。



こんなことをいって、

なにになるんだろう。


ナルにとって

重い迷惑になるだけなのに...



私は目をきゅっと閉じ

ナルの反応をまった。



なにも言わないナルに

少し視線をむけた。