凌太は私の正面に立つと、少し腰を曲げて私の目を捉えた。
「相変わらず、桃花っちは鈍いっすね。男がこういう場面でホッとする理由なんて一つしかないっすから」
凌太は厳しい顔でそう言って、顔を寄せてきた。
「一つしかないの?」
綺麗な顔が目の前にあるせいで、心臓はバクバクしてる。
「そうっすよ。…その相手の女が好きだからっす。桃花っちが大和っちのこと好きじゃないってわかったから、俺はホッとしたんすよ」
凌太はそう言って、小さく微笑む。
その笑顔が、切なそうに見えたのは気のせいかな?
「えっと…つまりどういうこと?」
私が聞くと、凌太は「鈍いっすね」と呟いて、いきなりキスしてきた。
突然の出来事に、頭が追いつかない。
凌太の唇がゆっくり離れて行った。
「俺は、桃花っちのことが、大好きなんすよ」



