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依頼人はある服飾店に勤める販売員の女性。
夫に先立たれ、幼稚園に通う4歳の娘と二人で暮らし。
ある日、依頼人が仕事から帰り、娘の話を聞いていると、『今日はお父さんと遊んだ』と言い出した。
不審に思った依頼人が『お父さんはいないでしょう?』と言えば、『いるもん』と娘は頑なに言い張る。
『じゃあお父さんはどこ?』と尋ねると、『あそこ。あれ、お父さんだよ~』と言って依頼人が仕事場から持ち帰っていたマネキンを指差したという。
何度も訂正したが、娘は一向に聞き入れない。
それでも、幼い子供特有の想像の世界と現実の区別がつかなくなってしまう症状で一過性のものだろうと、最初のうちは大して気にも留めていなかった。
日に日に娘の話は先立った夫に関する発言の割合が増えていった。
その話は、娘の知り得ない夫の性格や癖が窺い知れる内容だったと言う。
子供の作り話にしてはうまく出来過ぎている。
依頼人は気味が悪くなり、マネキンをどうにかしようとしたが、職場から持ち帰ったものなので勝手に処分するわけにもいかない。
仕方なく近くの寺に相談した依頼人だったが、『うちではそういった事例は扱っていないから』と住職に断られ、代わりにこの興信所を紹介された。

