「あれは本当に貴女のお父さんなの?」
一向に娘に落ち着く様子がなく、依頼人が困り果てた頃、乃碧が静かに訊ねた。
膝を折って屈み込み、少女に視線の高さを合わせている。
不思議と少女の動きはピタリと止まった。
「うん」
吸い込まれるような碧い目を見つめながら少女は頷く。
「本当にそうかしら?」
「えっ?」
二度目の問いに少女は当惑した表情を浮かべた。
さらに乃碧は言葉を重ねる。
「貴女のお父さん、あんな醜い人なの?」
この言葉に少女はハッとしたようだった。
顔を上げて前方をじっと見つめる。
それから乃碧に向き直り、口を開いた。
「……ちがう。わたしのお父さんはもっとかっこいいもん」
ボッ。
少女の言葉と共に炎は青色に変わり、マネキンは燃え尽きた。
「どうやら終わったようね。後始末と一応この子も祓ってあげなさい」
「はい」
静けさの戻った境内に、乃碧の明るい声が心地よく響く。
乃碧の指示に応える熾悒はあれだけ熱く燃え上がる炎の近くにいたというのに汗一つ掻いていない。
この程度は容易いということだろうか?
後始末を済ませた乃碧と熾悒は朧月の空の下、家路についた。
――後日。
「こんな依頼があったらこれからもどんどん持って来なさい」
「はい、今後ともよろしくお願いします」
こんな会話が乃碧と件の興信所の所長の間で取り交わされたという。
...to be continued.
一向に娘に落ち着く様子がなく、依頼人が困り果てた頃、乃碧が静かに訊ねた。
膝を折って屈み込み、少女に視線の高さを合わせている。
不思議と少女の動きはピタリと止まった。
「うん」
吸い込まれるような碧い目を見つめながら少女は頷く。
「本当にそうかしら?」
「えっ?」
二度目の問いに少女は当惑した表情を浮かべた。
さらに乃碧は言葉を重ねる。
「貴女のお父さん、あんな醜い人なの?」
この言葉に少女はハッとしたようだった。
顔を上げて前方をじっと見つめる。
それから乃碧に向き直り、口を開いた。
「……ちがう。わたしのお父さんはもっとかっこいいもん」
ボッ。
少女の言葉と共に炎は青色に変わり、マネキンは燃え尽きた。
「どうやら終わったようね。後始末と一応この子も祓ってあげなさい」
「はい」
静けさの戻った境内に、乃碧の明るい声が心地よく響く。
乃碧の指示に応える熾悒はあれだけ熱く燃え上がる炎の近くにいたというのに汗一つ掻いていない。
この程度は容易いということだろうか?
後始末を済ませた乃碧と熾悒は朧月の空の下、家路についた。
――後日。
「こんな依頼があったらこれからもどんどん持って来なさい」
「はい、今後ともよろしくお願いします」
こんな会話が乃碧と件の興信所の所長の間で取り交わされたという。
...to be continued.

