壱吾クンが掃除当番である理科室に到着すると、後ろを追ってきた女子生徒等は、どうしたものかと中の様子を伺いながら、入り口でわだかまった。
モテモテだな、壱吾クン。
いや、違う。
これはいつの頃からか出来たジンクスの所為だ。
【好きな人に調理実習のお菓子を上げる前に瀬名壱吾に渡せたら、その恋は成就する】
生憎だが、壱吾クン、そんなミラクルパワーは持ってナイ。
だが、壱吾クンに渡せる根性があれば、有象無象の男など容易くゲット出来るだろうと思われる。
神頼みならぬ壱吾クン頼み。
寧ろいっそ……肝試し。
…鬱陶しい。
やれやれと溜息を吐きながら壱吾クンは箒を手に持った。


