仕事は通常業務に引き継ぎ、帰れば引越しの準備と時間に追われる多忙な日々のおかげで煩わしい感傷に浸る暇もない。

勘の良いナンバークラスの数名は俺の為に内輪だけの送別会をしてくれたり、
俺がスカウトして育てた女の子は揃いのネックレスを買ってきてくれたり、月末までは心がくじけないか心配だった。

引越し当日は、マネージャーと支部長が見送りにきてくれて、
支部長が餞別にとΩのスピードスター[Silver&プラチナ]をくれた時は、
思わず涙腺が緩んでしまいそうだった。

ちなみに現在も大切に使わせてもらっている。

新幹線の中では独りと言う事もあり、色々と考える事ができた。

ひっきりなしに携帯にメールが入ってきて、返信がすごく大変だった、一人一人の思い出を文字に託して。

今までの俺は、大手の看板と言う庇護と、優秀な部下と言う懐刀のおかげで店舗責任者としてやってこれたのだと思う。

これからは八神個人の力量で仕事をしなくてはならないのだ。

不安と期待を胸に、僕を乗せた新幹線は一路東京へと進んでいた。