花に、嵐

「………なんだよ」

面倒くさそうに振り返った旺司郎の腕をガシッと掴む。

「い、一緒に帰ろうよ」

「………なんで」

「だって、」

美桜ちゃんと二人にしないでよ、と目で訴えてみる。

「花菜!………あ、お、旺…ちゃん?」

「どーも」

美桜ちゃんは近くまで来て初めて旺司郎の存在に気づいたらしい。

旺司郎は軽い感じで頭を下げる。

「……花菜、旺ちゃんも一緒だったのね……」

旺司郎から視線を外して、気まずそうにそう呟いた美桜ちゃんにイラっとした。


「そうだよ。だから来なくていいって言ったじゃん」

そんなに気まずいなら来なきゃいいのに。

だいたい、いくら私を迎えにくる目的があったとしても、元婚約者のマンションに来ようだなんて、私ならできないよ。

──なんて。一番あり得ない行動してるのは私か、と自虐的な思いが巡る。