花に、嵐

「そろそろ電車着くな」

「あ、…うん」

思わず後ろにそびえ立つ高層マンションを見上げる。

朔ちゃんは結局、追いかけてきてはくれなかった。

エントランスにはコンシェルジュさんしか見えない。

ちょっとだけ、追いかけてくれるかも、って期待してたけど。

実際、そうなったらなったでイヤだから。

複雑だ。


ふと、エントランスホールの端に、さっき見た生け花が目に入った。


間違いなく朔ちゃんの作品。

美しい──桜。

美しく、雄大に、存在感を放ち、凛と佇む。

けれどもその反面、いまにも散ってしまう儚さを持つ。



そう、あれはまるで────

「花菜!」

「……美桜ちゃん」

彼女そのもの。