花に、嵐

そんな風に朔ちゃんの部屋を想像しながら、携帯で何度も時間を確認していた。



ふと、ホールの端に飾られた花が目に入る。
暖色系の間接照明に照らされていた。

「あれは…」

黒い花器に桜。

木の骨組みにそって自然のまま生けられたようにも見える。

けれど、大胆なように見えて、枝の先までも緻密に計算された繊細な構成。

桜の花の木の美しさや雄大さ、そして散りゆく儚さが同時に表現された、朔ちゃんらしい作品だった。

「…綺麗」

もっと近くで見ようとソファーから立ち上がったとき。

「花菜」

「っ!」

待ちに待った声が聞こえてきた。