花に、嵐

『―――』

名前を呼んだのに、なぜか相手からの反応が返ってこない。

あれ?
着信相手の名前は確かに“朔ちゃん”だったはずだけど。


「――朔ちゃん…?」

確認するためにもう一度名前を呼んでみる。

すると、ため息とともに、耳に心地よい低音ヴォイスが聴こえてきた。


『―――声が大きい。うるさい。もう少し静かに話せないのですか。鼓膜が破れるかと思いましたよ』


「あう、ごめんなさい…」

まあ、言われた言葉は優しくないけどね。

今日の“朔ちゃん”は少しご機嫌がナナメなのかな。

『次から気をつけてください。それよりも、伝言聞きましたよ。それで、用事というのはなんですか?』

「あ、あのね!……朔ちゃん、今日空いてる?」

『―――仕事ですが』

「だ、だよねえ」