「…ちょっと、何処か入って話そうか?」




何とか君を繋ぎ止めたくて咄嗟に そう言ったんだけど…、

君は思い切り、俺の手を振り解いた。






「…!!




リアちゃ……」




「あのっ…!


もしファンの子に手を繋いでる所を見られたら…、

…誤解されます!


こんな、

東京みたいに人の多い所で、お店に入るのは危険です…!


あたし…

よく考えたら、友達 置いたまま来ちゃってるし…。


…会場に、戻ります!」




名前を呼び掛けた俺に、君は正論を並べ立てて、

少しの隙間も残さず、走り去ってしまった。






今 思えば、

あの時、いくらでも君を追い掛ける事は、出来た。


でも その1歩が踏み出せなかったのは……


10年以上 前、君を初めて好きに なった時から ずっと感じてた、

心の距離が はっきり、見えたから。




ずっと、君の側に居たけど


でも、物理的に どんなに近くに居ても、

君の心が俺に向く事は、なかった。




そんな現実を、

君が走り去る姿を目の前で見せられる事で、改めて突き付けられたような気がして…、

俺は ただ、君の後ろ姿を見つめて立ち尽くして居たんだ。