「……ヒカリさんっ 大変なんです!」




いつものスタジオで作業してたら、血相を変えたサナが飛び込んで来た。






「…何?


どしたの、そんなに慌てて」




「そ、それが ですね…っ


"かえで"さんが……あ いや、女性の方の楓さんが、ですね…」






「…うん」




「事務所で暴れてて…、社長も出て来る大騒ぎ なんですが…

近くに居たスタッフに訊いてみたら、その暴れてる原因てのが、どうやらカエデさん…あ これはリーダーの方ですが…、

えーと…リーダーに彼女が居る って事を、何らかの形で楓さんが知ってしまった みたいで…」






「へー…」




「それで暴れてたみたい なんですけど…、

大変なのは ここからで……」






「…ここから?」




「はい、

…最初は とにかく"リーダーを出せ"って、凄かったんですって。


でも こちらとしては当然 出さないように するじゃないですか?


そしたら…

なぜか今度は、矛先がヒカリさんに向いてしまって……」






「…ん!?」




「今は凄い剣幕でヒカリさんを出せ の、一点張り」






「………」




「私はヒカリさんから お話を伺ってたので、

誰も自分の味方を してくれない と 思った楓さんが、最後の砦でヒカリさんに助けを求めたんだろう って何となく分かったんですけど…


事情を知らない社長が、ちょうど そこに居た私を見つけて、

『今すぐ、景を連れて来い』と……

…仰せに なりまして……」






「……」




だんだん声が小さくなるサナに、

怒る気は無かったけど、思わず『マジかよ…』と、呟きが漏れた。