「ひーちゃん、ひーちゃん!」




「!」






自分の事を呼ばれたと思って思わず裕貴さんを見たら、

祐貴さんは あたし ではなく、

その隣に居る人を とんとん と、叩いて呼んでいた。






―…あれ?

あたし じゃなかった…?―




「…あ、ごめんね!


この子もファンの子から″ひーたん″なんて呼ばれてるから、さ」




怪訝そうに見ている あたしに気付いて、

祐貴さんが にこにこ と、説明してくれた。




…って、ん??






―…ファンの子…?

ひーたん……?―




……。


いや そんな まさか、ね…。







「ほら ほらぁ、ひーちゃん自己紹介っ」




信じられない気持ちで じっと眺めていると、

祐貴さんが そう言って、更に隣の人をバンバン叩く。






「…あー、初めまして。


景です。


えーと…とあるバンドのヴォーカルやってます…笑」




苦笑しながら、彼が言った。






―……いや いや いや、

そんな まさか…―




…あたしの思考は、そこで停止した。