「ね、石川くんの友達の平野くんってすごくいい人だね」


石川くんは立ち止まってあたしを見下ろした。


「いいやつだよ、司は」


うん、と頷くあたしに、石川くんの一言。

「あいつと付き合えば?」



・・・・・はい?


「石川くん!?」

「なんか楽しそうだったじゃん」


心拍数が上がって、顔が熱くなる。

何を言ってるんだろう。


「あたしが好きなのは石川くんだよ?」

咄嗟に、石川くんの腕を掴んで訴える。

でも、すぐに振り払われて…。

「あっちもこっちもいい顔して、大変だな。
悪いけど、そんな女を彼女にしたいとか俺は思わないから」


石川くんはもう、あたしの方を見てくれなかった。

かける言葉を探す間もなく、改札を通って行ってしまった。