「そんな……ダメです先輩……あっ……うぇ!?」
私、飛んでない?
急に浮遊感を覚えたかと思うと、ドサッと何かの上に背中から落ちた。
まだ地に足は着いていない。
ということは……?
短距離飛行の間に正気を取り戻した私は、仰向けの状態で目を瞬く。
「い……ちはし、先輩?」
あれだけ騒がしかった声がぴたりと止んでいる。
私の眼前に広がっていたのは青い空でも白い雲でもなく……。
市橋先輩の無敵に素敵なお顔だった。
先輩。
市橋先輩の顔が私の目の前に!!
ということはこの体勢、市橋先輩にお姫様抱っこされてる!?
……大丈夫か、私の頭?
あまりにぶっ飛んだ状況に己の正気を疑ってしまう。
そうか。
これはさっき私の妄想おつむが作り出した幻の続きに違いない。
だって、あの激モテな市橋先輩が私みたいなちんちくりんをお姫様抱っこなんて……。

