有り得ない。
……ちんちくりん。
自分の思考に自分で傷付きながらも、私はある意志を固めた。
これが妄想なら。
これが妄想ならば。
市橋先輩とのスウィート・スクール・ライフを目一杯楽しもうじゃないか!!
この都合よく発現した幻覚を利用しない手はない。
妄想なら見放題、触り放題。
まずは先輩に思い切り抱きついて、先輩の匂いを胸一杯吸い込む。
それから、先輩と見つめ合って……。
キラキラ光るビー玉みたいな先輩の瞳が今日も美しい。
「市橋先ぱ……あれ?」
唐突に私の夢のシチュエーションは終わりを告げた。
名前を呼ぼうとした途端にストンと地面に降ろされてしまったのだ。
「先ぱ……」
なおも追いすがろうとする私だったが、先輩は私の声などまるで聞こえていないかのように何も言わず去っていってしまった。
ううっ。
先輩クール過ぎですっ!!
そこがいいんだけど!!
私の妄想ならもっと優しくしてくれても……ってあれ?
これってもしかして現実だったの?

