10秒位唇を重ね、ゆっくり離した。
男性は麗子の肩を持ちながら、麗子の顔を見つめた。
「…なっ…離して…」
麗子は状況が理解出来ず、固まっていた。
見ず知らずの人にこんな事されて、固まらない訳がない。
でも、どうしても麗子は顔が真っ赤になってしまった。
「ふっ」
男性は麗子の肩を持ちながら薄ら笑いをしてじっと見ていた。
「ちょっ、ちょっと」
麗子は真っ赤になりながらも肩から男性の手を振り払った。
「分かった?俺、モテるんだよ」
最初に少しクスクスと笑いながら男性は麗子に言った。
「あ…あんたね…」
麗子は怒りと恥ずかしさを混じり合わせた様な表情で喋り出した。
「誰にでもこういう事できるのがモテないっていうの!あなたは初対面から嫌な口の聞き方だし。かと思えば今度はいきなり…」
「いきなり?」
馬鹿にする様な口調と、笑ってはいたが、我慢しながら麗子に言った。
すると麗子はまたムッとした。
「とと、とにかく。あなたは可笑しい!北極でも行って頭を冷やしてくれば。」
「くっ。北極なんか今行ったら凍え死ぬよ」
言ったら言い返してくるのにムカついて、麗子はふんっと少し警戒しながら入り口に歩いて行った。
それを見て、聞こえるように大きな声で叫んだ。
「どーも。あんた面白いよ。また本返しに来るからー。あと俺、蒼 春馬。あんたって名前じゃないからね」
春馬はそれだけ言うと入り口とは逆の方向へ帰って行った。
麗子は聞こえないふりをしていたが、春馬の言葉をしっかり聞いていた。
そして麗子は心臓がドキドキして鼓動が激しかった。