「お願いします。」
そう言って開けられた
助手席に座る。
私がシートベルトを付けたのを
確認すると、ゆっくりと
車は動き始めた。
「佐藤、」
運転しながら話す先生。
「はい、」
「あの日のこと覚えてるか?
俺らが始めてであった場所」
「覚えてるか?もなにも、
忘れてたのは
先生の方だったじゃないですか!」
「ははっ、そうか。」
「先生、私が先生に好きだと
伝えた日、あの日の事はなかった事に
してくれ、そう言いましたよね。」
「ぁあ。」
涙が零れそうになるのを
こらえて、話を続ける。
「先生、もう忘れた?」
「なにをだ?」
信号は赤になった。
「私への気持ち、
あの時伝えてくれたあの気持ち
もう、忘れてしまった?
先生の中で、終わってしまった?」
涙が頬を伝うのが
自分でわかる。
「わからない。」
「わからない?」
「自分でも分からない。
俺らは認められない恋愛をあの時
していた。 だけど、俺は
お前を守るのも、自分を守るのも、
お互いに忘れる事が一番だって
思った。」
「わかります。」
信号は赤から青へ変わった。
「お前と顔を合わせる事が
なんだかきまずきような
日が続いた。だから、お前とは
なるべく顔を合わさないように
そう思ってた。
だけど、お前と少しでも
目が合うと、
鼓動が震えるような感覚がした。
頭ではお前を拒否してるのに、
頭ではない、感情が俺を支配して
佐藤夢菜が、頭に焼き付いて
離れなかった。」
「うん、、。」
「これが好きって事なのか。
自分じゃわからない。
お前は、俺とじゃ
幸せになれない」
ポロポロ涙は頬を伝い続ける。
「何もわかってないですよ。先生」
わたしの低い声に先生はチラリと
こちらを見た。
「それが好きってことだよ。」

